特性のない男
特性のない男

特性のない男

オーストリアの作家ローベルト・ムージルによる20世紀ドイツ語文学の記念碑的作品。第一次世界大戦前夜のウィーンを舞台に、主人公の知的な探求と社会の混迷を描き、未完に終わった長大な小説。

ウルリヒ: 物語の中心人物。32歳、無職で独身。「特性のない男」と呼ばれる彼は、かつて軍人、機械工学者、数学者と様々な道に進みながらも、どれにも定着せず、世俗的な出世や成功に関心を持ちません。現実を既定のものとして受け入れるのではなく、他のありうる可能性を常に意識する「可能性感覚」を持ち、そのために世界が幻想的に見え、悩まされます。著名な法律学者であった父の勧めで、「平行運動」という奇妙な計画に参加することになります。 ディオティーマ: ウルリヒのいとこ。外務省高官の妻で、社交界の中心的な存在。彼女が主宰するサロンが「平行運動」の主な会場となり、理想主義的な視点から運動を推進しようとします。 モースブルッガー: 娼婦を殺害し、死刑判決を受けた男。その精神状態と責任能力は法廷や社交界で議論の的となり、作品全体に異質な影を落とします。 アガーテ: ウルリヒの妹。長年生き別れていましたが、父の死を機に再会し、やがてウルリヒと同居するようになります。二人の間には近親相姦的なニュアンスを帯びた、複雑で特殊な関係が生まれます。