弱いロボットとは何か|弱いロボット5選と不便益について
弱いロボットとは「ひとりで何も出来ない」ロボットです。その代わり、ひとの手を借りすことで「何でも出来る」ロボットになります。この記事では「弱いロボット」について、5体のロボットを紹介しながら解説しています。
岡田美智男さんは、ルンバをはじめとしたお掃除ロボットが、万能ロボットではないことに触れつつ、「お掃除ロボットの邪魔にならないようイスをどかしたり、引っかからないようコードを束ねたりする。すると、いつの間にか家の中は綺麗 に整理されてる」と語ります。イスをどかし、コードを束ねたのは岡田さんですが、 お掃除ロボットが「イスをどかし、コードを束ねることを促した」とも言える わけです。家の中の整理は、ひととロボットによって成されたという考え方です。
自己完結した「強いロボット」ではないからこそ、高価な技術を削ぎ落としたチープデザインでも目的を達成できる 。そんなことを「ゴミ箱ロボット」は教えてくれます。
その② もじもじロボット「アイ・ボーンズ」「アイ・ボーンズ」はひととコミュニケーションをとることが苦手です。常におろおろと、もじもじとしています。 腰の部分にスプリングが入っているため、1動作ごとにゆらゆらと頭を揺らす姿もまた、「もじもじ」しているように見えます。
「アイ・ボーンズ」はもじもじと、ティッシュを配ります。なかなか立ち止まってくれないひとたちに向かって、おそるおそるティッシュを差し出します。ティッシュ配りというよりは「ティッシュを受け取ってくれるひと探し」のようです。やさしい人が受け取ってくれると、「アイ・ボーンズ」はこれまたもじもじとしながらお辞儀を返します。
もじもじとしながらも、ちゃっかり「ティッシュを配る」という目的を達成しています。ティッシュを受け取る側も、「無理やりティッシュを受け取った」とは思いません。むしろ 「ティッシュを受け取ることで、このロボットを助けてあげた」とすら思うことでしょう 。
その③ 顔色をうかがう「トーキング・アリー」「こんどね、ねっ、きいてる?」「うん」「こんどね、とっ、とうきょうでのね、オリンピックがね、きまったんだって、しってた?」
ロボットの「アリガトウ」はキカイ的で、自分に向けられている気がしません。この「アリガトウ」に足りていないのは、「 他者 」でした。 言葉は、話し手によって自己完結していると思われがちですが、実際は聞き手との間でつくられます。
ここで選ばれた「あのさー」や「なんかこう、ふわふわっとした、わかる?そう、スフレ!」という発話は、一件不必要そうに見えつつも、相手の人柄や反応・表情を見ながら選択されていることがわかります。このように、 発話は話し手と聞き手による共同製作物であり、「他者」のいる発話にこそ人間らしさを感じられる のです。
その④ 目玉だけの「む〜」ドラゴンクエストのスライムのようなシルエットに、大きな目玉が1つだけついたロボットが 「む〜」 です。「スライム」から「む〜」と名付けられたのではなく、中国語の「目(mù)」が由来のようです。
この「なんか返答してくれてる感」が、「む〜」の最大の特徴です。 赤ちゃんの 喃語 なんご のように、言葉にはならないものの、聞き手の「解釈」を生むことができます 。「もしかしたら、名前を答えてくれたのかもしれない」「何か困っているのかもしれない」「嬉しいのかもしれない」。
その⑤ 並び歩く「マコのて」 マコのて 2019@こども未来館ここにこ「誰かと手をつないで歩く」ことは、実はとても社会的な行動である ことを忘れてしまいます。
「マコのて」は互いの手をとって歩くことによって、ロボットの意思(のようなもの)を推し量るというデザインになっています。
言葉を交わす、狭い道をすれ違う。こうした場面では相手との「対峙する関係」を想定しやすいものの、「会話」や「すれ違い」という場面に対して、ふたりは並んでいるという考え方も出来ます。岡田美智男さんはこのような関係を「並ぶ関係」と表現します。つまり、2者間でのみの問題でなく、課題に対し2者が並んでるというのです。
その意味で、「マコのて」は「歩く」という課題に対してひとと「並ぶ関係」のロボットなのです。
「弱いロボット」の不便益
赤ちゃんは家庭の中で最も弱い存在でありながら、最も強い存在でもあります 。
また、赤ちゃんのお世話をすることで、周りもまた幸せを感じられたりするのだから不思議です。
最後に「不便益」について触れていきたいと思います。
不便益とは「不便益」 とは、 不便だからこそ得られる効用のこと です。不便さにより「工夫」や「出会い」が促され、達成感や自己肯定感を得られるというのが「不便益」の特徴です。
お菓子のヒット商品として「甘栗むいちゃいました」というものがあります。甘栗の皮をむく手間を省く、「便利」な商品と言えます。一方、「ねるねるねるね」はわざわざ「練る」作業を強いていますので、むしろ「不便」な商品かもしれません。いっそのこと「ねるねるねるね練っときました」として売り出してみたらいかがでしょう。……誰も買わないですね。
『 不便益―手間をかけるシステムデザイン―』の中で、京都大学の川上浩司さんは、不便による客観的益を「システムが提供する機能」と捉えてみる考え方を提唱します。
「不便益」は「便利益」に比べ、定量化しづらいものです。しかし定量化しやすい面ばかりを見ていると、「不便益」を見逃してしまいます。
まとめ
「弱いロボット」とは、「ひとりでは何も出来ないロボット」です。一見、不便で役に立たないようなロボットですが、彼らと触れ合うことでロボットの活用の広がりを目の当たりにすることが出来ます。