漢詩の朗読
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漢詩の朗読

出師の表 諸葛亮孔明の日本語朗読です。現代語訳と解説付きです。

臣(しん)亮(りょう)言(もー)す。 先帝(せんてい) 創業(そうぎょう)未(いま)だ半ばならずして、中道(ちゅうどう)に崩殂(ほうそ)せり。 今 天下三分(てんかさんぶん)して、益州(えきしゅう)疲弊(ひへい)す。 此(こ)れ誠に危急存亡(ききゅうそんぼう)の秋(とき)なり。 然(しか)れども侍衛(じえい)の臣(しん)、内(うち)に懈(おこた)らず、 忠志(ちゅうし)の士(し)、身を外に亡(わす)るるは、 蓋(けだ)し先帝の殊遇(しゅぐう)を追いて、之(これ)を陛下に報(むく)いたてまつらんと欲(ほっ)すればなり。 誠(まこと)に宜(よろ)しく聖聴(せいちょう)を開張(かいちょう)して、以(もっ)て先帝(せんてい)の遺徳(いとく)を光(おおい)にし、 志士(しし)の気(き)を恢(おおい)にしたまふべし 。 宜(よろ)しく妄(みだ)りに自(みづか)ら菲薄(ひはく)し、喩(たと)えを引き義を失(うしな)いて、 以(もっ)て忠諫(ちゅうかん)の路(みち)を塞(ふさ)ぎたまふべからざるなり。 宮中・府中(きゅうちゅう・ふちゅう)は、倶(もと)に一体(いったい)為(た)り、 臧否(ぞうひ)を陟罰(ちょくばつ)して、宜(よろ)しく異同(いどう)あるべからず。 若(も)し姦(かん)を作(な)し科(とが)を犯(おか)し、及(およ)び忠善(ちゅうぜん)を為(な)す者有らば、 宜(よろ)しく有司(ゆうし)に付して、其(そ)の刑賞(けいしょう)を、論じたまひ、 以(もっ)て陛下平明(へいめい)の治(ち)を昭(あき)らかにし、 宜(よろ)しく偏私(へんし)して、内外(ないがい)をして法(ほう)を異(こと)にせしめたまふべからざるなり。

現代語訳 語句

■臣亮 臣下である諸葛亮。 ■先帝 蜀漢の先帝劉備。字は元徳。後漢松末、黄巾賊を討って功績を立て諸葛亮孔明を「三顧の礼」をもって迎え、蜀を平定。帝位についた。呉との戦に敗れ白帝城に崩御。 ■創業 漢王朝を復興するという事業。 ■中道 道の途中。 ■崩殂 崩御。 ■益州 蜀漢の地。現在の四川省。 ■危急存亡之秋。 危うく迫った存続するか亡びるかという大事な時。「秋」は穀物が実り収穫をする大事な時期であることから、事にあたって大事な時。 ■侍衛之臣 おそばにお仕えする臣下。 ■不懈於内 宮中において、その努めをおろそかにしない。 ■忠志之士 忠実な志を抱く者。 ■亡 「忘」とするものも。 ■蓋し まさしく。たしかに。思うに。 ■遇 待遇。 ■追 感謝する。 ■聖聴 天子が臣下の意見を聴くこと。 ■開張 ここでは耳を開く(=意見を聴く)こと。 ■光 輝かせること。 ■志士 志ある者。 ■恢 大いに高める。 ■妄 むやみに。 ■菲薄 「菲」も「薄」も「薄い」の意味。ここでは自分を徳が薄いと卑下すること。 ■引喩 都合のいい例を引いて言い訳すること。 ■忠諫之路 臣下が真心からお諌めする道。 ■宮中・府中 「宮中」は天子がまします所。宮廷。禁中。「府中」は政治を行う役所。政府。 ■陟罰臧否 良い行いをした者を昇進させ悪い行いをした者を罰する。「陟罰」は昇進させたり罰したりすること。「臧否」は善と悪。 ■作姦 不正をなす。 ■犯科 罪を犯す。 ■付有司 役人に預ける。 ■平明治 公正で明らかな政。 ■昭 世に明らかに示す。 ■偏私 私情の入った偏った態度。えこひいき。

侍中・侍郎郭攸之・費褘・董允等、 此皆良実、志慮忠純。 是以先帝簡抜、以遺陛下。 愚以為宮中之事、事無大小、悉以咨之、 然後施行、必能裨補闕漏、有所広益也。 将軍向寵、性行淑均、暁暢軍事、 試用於昔日、先帝称之曰能。 是以衆議挙寵為督。 愚以為営中之事、悉以咨之、 必能使行陣和睦、優劣得所也。 親賢臣、遠小人、此先漢所以興隆也。 親小人遠賢士、此後漢所以傾頽也。 先帝在時、毎与臣論此事、 未嘗不歎息痛恨於桓・霊也。 侍中・尚書・長史・参軍、此悉貞良死節之臣。 願陛下親之信之。 則漢室之隆、可計日而待也。

書き下し

侍中(じちゅう)・侍郎(じろう)郭攸之(かくゆうし)・費褘(ひい)・董允等(とういんら)、 此(こ)れ皆良実(りょうじつ)にして、志慮忠純(しりょちゅうじゅん)なり。 是(ここ)を以(もっ)て先帝(せんてい)簡抜(かんばつ)したまふて、以(もっ)て陛下に遺(のこ)したまへり。 愚(ぐ)以為(おも)えらく宮中(きゅうちゅう)の事、事(こと)大小と無く、悉(ことごと)く以(もっ)て之(これ)に咨(はか)り、 然(しか)る後(のち)に施行(しこう)したまへば、必ず能(よ)く闕漏(けつろう)を裨補(ひほ)し、広益(こうえき)する所有らん、と。 将軍(しょうぐん)向寵(しょうちょう)、性行淑均(せいこうしゅくきん)にして、軍事に暁暢(ぎょうちょう)す。 昔日(せきじつ)に試用せられ、先帝(せんてい)之(これ)を称したまひて能(のう)と曰(のたま)えり。 是(ここ)を以(もっ)て衆議(しゅうぎ)寵(ちょう)を挙(あ)げて督(とく)と為(な)す。 愚(ぐ)以為(おも)えらく営中(えいちゅう)の事、悉(ことごと)く以(もっ)て之(これ)に咨(はか)りたまへば、 必ず能(よ)く行陣(こうじん)をして和睦(わぼく)し、優劣(ゆうれつ)をして所を得さしめん、と。 賢臣(けんしん)に親しみ、小人(しょうじん)を遠ざくるは、此(こ)れ先漢(せんかん)の興隆(こうりゅう)せし所以(ゆえん)なり。 小人(しょうじん)に親しみ賢臣(けんしん)を遠ざくるは、此(これ)後漢の傾頽(けいたい)せし所以(ゆえん)なり。 先帝(せんてい)在(いま)しし時、毎(つね)に臣(しん)と此事(このこと)を論じたまひ、 未(いま)だ嘗(かつ)て桓(かん)・霊(れい)に歎息痛恨(たんそくつうこん)せずんばあらざるなり。 侍中(じちゅう)・尚書(しょうしょ)・長史(ちょうし)・参軍(さんぐん)、此(こ)れ悉(ことごと)く貞良死節(ていりょうしせつ)の臣なり。 願はくは陛下 之(これ)に親しみ之(これ)を信じたまへ。 則(すなわ)ち漢室の隆(さか)んならんこと、日を計(はか)りて待つべきなり。

現代語訳 語句

■侍中 官名。天子の左右に侍して顧問に応ずる官。 ■侍郎 官名。黄門侍郎。侍中と共に天子の左右に侍する。侍中より下位の官。 ■郭攸之 侍中。伝未詳。南陽(河南省)の人。字は文偉。 ■費褘 侍中。江夏(湖北省)の人。 ■董允 枝江(湖北省)の人。字は休昭。黄門侍郎。 ■良実 善良で忠実。 ■志慮 こころざし。 ■忠純 真心があっ純粋であること。 ■簡抜 選び抜く。「簡」は選ぶ。 ■愚 孔明が自分のことをへりくだって言っている。 ■以為 思いますに…。 ■咨 相談して尋ねる。 ■裨補 助け補う。 ■闕漏 欠けて漏れた所。手抜かり。 ■広益 広く益する。 ■向寵 しょうちょう。叔父と共に劉備に仕えた。劉備が呉に攻め込んだ夷陵の戦いの撤退戦に功績があった。漢嘉郡の蛮族を征伐した時殺害された。 ■性行 性質と行動。 ■淑均 善良で公平。 ■暁暢 明るく通じている。 ■督 総司令官。 ■営中 軍営の中。 ■行陣 隊列を作っている軍隊。 ■和睦 協調し助け合うこと。 ■先漢 前漢のこと。高祖から平帝に至る十二代二百十五年。 ■後漢 新の後、光武帝から献帝に至る十二代、百九十五年。 ■桓・霊 後漢の十代桓帝・十一代霊帝。この時代宦官が専横し多くの人材が殺され国家が衰退した。これを党錮之禍(とうこのか)という。 ■尚書 官名。詔勅などの文書を管理する官。はじめ地位が低かったが次第に上がっていった。 ■長史 官名。事務次官。 ■参軍 官名。軍務に参与する官。 ■貞良 正しく真心のあること。 ■死節 正義のためなら死をも恐れない。

臣本布衣、躬耕於南陽、 苟全性命於乱世、不求聞達於諸侯。 先帝不以臣卑鄙、猥自枉屈、 三顧臣草廬之中、 諮臣以当世之事。 由是感激、遂許先帝以駆馳。 後値傾覆、受任於敗軍之際、奉命於危難之間。 爾来二十有一年矣。 先帝知臣謹慎、 故臨崩、寄臣以大事也。 受命以来、夙夜憂歎、 恐託付不効、以傷先帝之明。 故五月渡濾、深入不毛。 今南方已定、兵甲已足。 当奨率三軍、北定中原。 庶竭駑鈍、攘除姦凶、 興復漢室、還于旧都。 此臣之所以報先帝、而忠陛下之職分也。

書き下し

臣(しん)は本(もと)布衣(ほい)、躬(みづか)ら南陽(なんよう)に耕(たがや)し、 苟(いやし)くも性命(せいめい)を乱世(らんせい)に全(まっと)うせんとして、聞達(ぶんたつ)を諸侯(しょこう)に求めざりき。 先帝(せんてい) 臣の卑鄙(いや)しきを以てしたまわず、猥(みだ)りに自(みづか)ら枉屈(おうくつ)したまひて 三(み)たび臣(しん)を草廬(そうろ)の中(うち)に顧(かえり)みたまひ、 臣(しん)に諮(はか)るに当世(とうせい)の事を以(もっ)てしたまへり。 是(これ)に由(よ)りて感激し、遂(つい)に先帝(せんてい)に以て駆馳(くち)するを許さる。 後(のち)傾覆(けいふく)に値(あ)い、任(にん)を敗軍(はいぐん)の際(さい)に受け、命(めい)を危難(きなん)の間(かん)に奉ぜり。 爾来(じらい)二十有一年(にじゅうゆういちねん)なり。 先帝(せんてい) 臣(しん)の謹慎(きんしん)なるを知りたまひ、 故(ゆえ)に崩(ほう)ずるに臨(のぞ)み、臣(しん)に寄するに大事(だいじ)を以(もっ)てしたまへり。 命(めい)を受けて以来(いらい)、夙夜(しゅくや)憂歎(ゆうたん)し、 託付の効あらずして、以(もっ)て先帝(せんてい)の明(めい)を傷つけんことを恐る。 故(ゆえ)に五月(ごがつ) 濾(ろ)を渡(わた)り、深く不毛(ふもう)の地に入(い)る。 今南方(なんぽう)已(すで)に定まりて、兵甲(へいこう)已(すで)に足れり。 当(まさ)に三軍(さんぐん)を奨率(しょうそつ)し、北のかた中原(ちゅうげん)を定むべし。 庶(こいねが)はくは駑鈍(どどん)を竭(つ)くし、姦凶(かんきょう)を攘除(じょうぢょ)し、 漢室(かんしつ)を興復(こうふく)し、旧都(きゅうと)に還さんことを。 此(こ)れ臣(しん)の先帝(せんてい)に報いたてまつりて、陛下に忠(ちゅう)なる所以(ゆえん)の職分(しょくぶん)なり。

現代語訳 語句

■布衣 木綿や麻で編んだ庶民の着物。転じて、無位無官の者。 ■南陽 南陽郡襄陽(湖北省)の西方の地、隆中。 ■苟 どうにか。 ■聞達 立身出世して名が知れること。 ■卑鄙 身分の卑しい者。 ■枉屈 曲げ屈する。劉備が身を屈して諸葛亮の庵を訪ねたことを指す。 ■三顧 三顧の礼の故事。劉備が諸葛亮を訪ねて二度まで会えず三度目にようやく会えた。 ■諮 尋ねる。 ■当世之事 今の時代になすべきこと。孔明は劉備に問われてて「天下三分の計」を示した。 ■駆馳 駆け馳せる。奔走すること。大いに働くこと。 ■傾覆 建安13年(208年)、劉備軍が当陽の長阪で曹操軍の攻撃を受け大敗を喫したこと。張飛と趙雲の活躍により劉備は江夏へ逃れた。 ■受任於敗軍之際、奉命於危難之間 長阪橋の戦いの後、命を受けた孔明が呉と同盟して赤壁で曹操を破ったことを指す。 ■二十有一年 孔明が劉備に仕え始めた建安12年(207年)からこの出師の表の書かれた建興5年(227年)。 ■謹慎 つつしみ深いこと。 ■夙夜 日夜。 ■憂歎 憂い嘆く。 ■託付 委託されたこと。 ■濾 濾水。四川と雲南との間を流れる金沙江とも、その上流の若水とも。建興3年(225年)孔明は濾水を渡り南蛮征伐をした。 ■不毛 不毛の地。南蛮を指す。 ■兵甲 武器と防具。 ■奨率 励まし率いる。 ■駑鈍 愚鈍。へりくだって言っている。 ■攘除 討ち払う。 ■姦凶 凶悪な賊徒。魏を指す。この前年(226年)魏の曹丕は崩じ曹叡が即位している。

至於斟酌損益、進尽忠言、則攸之・褘・允之任也。 願陛下託臣以討賊興復之効。 不効則治臣之罪、以告先帝之霊。 若無興徳之言、則責攸之・褘・允等之咎、以彰其慢。 陛下亦宜自謀以咨諏善道、察納雅言、 深追先帝遺詔。 臣不勝受恩感激。 今当遠離、臨表涕泣、不知所伝。

書き下し

損益(そんえき)を斟酌(しんしゃく)し、忠言(ちゅうげん)を進め尽くすに至りては、則(すなわ)ち攸之(ゆうし)・褘(い)・允(いん)の任(にん)なり。 願はくは陛下 臣(しん)に託するに討賊興復(とうぞくこうふく)の効(こう)を以ってしたまへ。 効(こう)あらずんば則(すなわ)ち臣(しん)の罪を治(おさ)め、以(もっ)て先帝(せんてい)の霊に告げたまへ。 若(も)し徳を興(おこ)すの言無くんば、則(すなわ)ち攸之(ゆうし)・褘(い)・允等(いんら)の咎(とが)を責め、以(もっ)て其(そ)の慢(まん)を彰(あら)はせたまへ。 陛下も亦(また)宜(よろ)しく自(みづか)ら謀(はか)りたまひて以(もっ)て善道(ぜんどう)を咨諏(ししゅ)し、雅言(がげん)を察納(さつのう)し、 深く先帝(せんてい)の遺詔(いしょう)を追いたまふべし。 臣(しん)恩(おん)を受くるの感激に勝(た)えず。 今遠く離るるに当たり、表(ひょう)に臨(のぞ)みて涕泣(ていきゅう)し、伝う所を知らず。

現代語訳 語句

■損益 物事の利害。 ■斟酌 見計らって手加減すること。 ■慢 怠慢。 ■謀 考える。思慮する。 ■善道 正しい道。 ■咨諏 相談して(臣下に)尋ねる。 ■雅言 正しい言葉。 ■察納 意見を受け入れる。 ■遺詔 先帝の御遺命。

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