映画『太陽の帝国』と子守歌
映画の劇伴曲に強い印象を受けたことはありませんか? 劇伴曲とは映画やTVドラマの劇中で流れる音楽のことです。 音吉はスティーブン・スピルバーグ監督の『太陽の帝国(Empire of the Sun)』(1987)で流れていた劇伴曲に強い印象を覚え、折に触れて曲名を調べていたのですが、それが何であるかを知ったのはつい最近のことです。 まず映画について触れましょう。舞台は日中戦争時の上海。イギリス租界で生まれ育ったジェイミー(ジム)少年は、日本軍が上海を占領した際に両親とはぐれ、捕らえられて蘇州の捕虜収容所に送られますが、絶望と恐怖のさなかにあっても生きる知恵と希望を見出し、やがて両親と再会するま…
映画の劇伴曲に強い印象を受けたことはありませんか? 劇伴曲とは映画やTVドラマの劇中で流れる音楽のことです。 音吉はスティーブン・スピルバーグ監督の『太陽の帝国(Empire of the Sun)』(1987)で流れていた劇伴曲に強い印象を覚え、折に触れて曲名を調べていたのですが、それが何であるかを知ったのはつい最近のことです。 まず映画について触れましょう。舞台は日中戦争時の上海。イギリス租界で生まれ育ったジェイミー(ジム)少年は、日本軍が上海を占領した際に両親とはぐれ、捕らえられて蘇州の捕虜収容所に送られますが、絶望と恐怖のさなかにあっても生きる知恵と希望を見出し、やがて両親と再会するまでが描かれています。 音吉が知る限りでは、件の劇中曲は、ストーリーが転換する大切なシーンで少なくとも二度、使われています。映画の冒頭でも流れていたような気がするんですが、それは忘れちゃいました。 音吉が覚えている一度目は、零戦に憧れていたジムが、特攻隊が出撃する際に敬礼をしながら歌うシーンです。
映画を観ていない方でも胸を打つシーンではないかと思います。映画で使われているのは、現在はミュージカルで活躍しているジェームズ・レインバード(James Rainbird, 1975 - )の歌声です。 この印象深い曲の名は『スオ・ガン(Suo-Gân [sɨɔɡɑːn])』。ウェールズ語で子守歌(suo = lull ; cân = song)のことです。採譜されたのは19世紀初頭。歌詞はウェールズの民俗学者で詩人のロバート・ブライアン(Robert Bryan, 1858 - 1920)によって採録されましたが、誰が作詞・作曲を行ったかは伝統曲の常で不明です。発音の難しいウェールズ語の歌ですが、美しいメロディゆえにキリスト教諸教会では聖歌・賛美歌として歌われています。とか言っときながらカトリック教徒の音吉は知りませんでしたが。
歌詞も素朴で美しいです。歌の意味が分かると、スピルバーグ監督が二度のシーンでこの歌を採用した意味もよく分かって、むしろ歌詞が心に刺さって痛みを覚えます。戦災に為すすべもなく怯える子どもたちや、戦争のない社会に生まれ落ちながら親の放置で落命する子どもたち。こんなニュースは見たくも聞きたくもありませんが、現実を直視し、立ち向かうために大人が心に刻みつけなければならないのは、こんな歌なのかもしれません。 最後に、歌詞とカイ・トーマス(Cai Thomas, 2007 - )少年の歌をアップします。
Huna blentyn ar fy mynwes,Clyd a chynnes ydyw hon;Breichiau mam sy'n dynn amdanat,Cariad mam sy dan fy mron;Ni chaiff dim amharu'th gyntun,Ni wna undyn â thi gam;Huna'n dawel, annwyl blentyn,Huna'n fwyn ar fron dy fam.
Huna'n dawel, heno, huna,Huna'n fwyn, y tlws ei lun;Pam yr wyt yn awr yn gwenu,Gwenu'n dirion yn dy hun?Ai angylion fry sy'n gwenu,Arnat ti yn gwenu'n llon,Tithau'n gwenu'n ôl dan huno,Huno'n dawel ar fy mron?
Paid ag ofni, dim ond deilenGura, gura ar y ddôr;Paid ag ofni, ton fach unigSua, sua ar lan y môr;Huna blentyn, nid oes ymaDdim i roddi iti fraw;Gwena'n dawel yn fy mynwes.Ar yr engyl gwynion draw.