セラミックスのレオロジー(スラリーの調整)
今回はレオロジーについて説明します。セラミックスに携わっている方は一度は耳にしたことはあるのではないでしょうか。スラリー調整などは職人技術や経験も非常に大切ですが、レオロジーの観点から学問的にみることで再現性が高く狙い通りの粘度調整を行うことができるようになります。
スラリーを調製する際にはレオロジー(rheology) についての知識が必要になります。レオロジーは流体の流れ特性に関する学問であり、流れ特性は粘性率で表されます。低濃度の球形粒子の懸濁液では粒子相互間や粒子と液体間に相互作用がないので、以下のEinsteinの関係式が成立します。$$\frac=1 + 2.5V$$ここで、ηは懸濁液の粘性率、η0は粉末粒子を含まない液体の粘性率、Vは固体粒子の体積分率になります。この関係式では固体の体積分率だけで粘性が決まりますが、実際の系では粒子の大きさ、表面電荷及び形状が大きな影響を及ぼします。
粒径の影響 粒径(μm)粒子表面間の平均距離(Å)10約90001約9000.1約900.05約200.01約10ファンデルワールス力は一般に 20 Å 程度以下の距離で影響を及ぼすため、サブミクロンの粒径をもつ粒子系では比較的希薄な懸濁液であってもかなりの粒子間引力が生じ、粘性が増加します。
粒子形状の影響 板の長さ(μm)板の厚さ(μm)粒子間平均距離が20Åの時の粒子体積分率1013010.1300.10.01280.010.00117 二次粒子の影響スラリーの調製
例えば、カオリナイト系粘土の泥漿については十分な研究が行われています。pHが6以上でしかも Na + やLi + の濃度が低い場合にはカオリナイトが水中によく分散し、それぞれの粒子は僅かな負電荷を持ちながら互いに反発しています。しかしながら、微量(≒10 -5 mol)の Al 3+ またはFe 3+ が存在すると粒子上の正味の電荷が減少して凝集が起きてしまいます。pHが6以下で10 -3 mol程度のハロゲン化アルミニウムもしくはハロゲン化鉄が存在するときにはカオリナイトは分散します。この場合には、電荷が反転して粒子が十分な量の正の電荷を持って互いに反発します。pHが2以下でCl − , NO3 − , CH3COO − イオンなど1価の陰イオンが存在する際にも同様のことが発生します。
泥漿鋳込み成形
粘土以外のセラミックスでも泥漿鋳込み成形が可能です。これは非粘土質の粉末を分散して固体含有量の多い懸濁液をつくれるかどうかに全てがかかっています。ほとんどの酸化物に対しては、水の極性や酸と塩基の濃度を制御してpHを変化することによって粒子の周囲に荷電領域を形成して互いに反発させるように工夫します。たとえば2.8の比重をもつAl2O3のスラリーの粘性率はpH4.5では0.065Pa・sになりますが、pH6.5では3Pa・s程度になります。pH 4.5のスラリーは分散性が優れており、良好な鋳込み特性を示します。この系では粘性は固体の含有量には敏感ではなく、比重を2.6 に下げても粘性は1/2に低下するだけになります。これに対してpH6.5のスラリーでは比重を2.6にすると粘性は1/10に低下します。