金子みすゞ 「芝草」「げんげの葉の唄」「げんげ」「仲なおり」(『金子みすゞ全集』より)
芝草名は芝草というけれど、その名をよんだことはない。それはほんとにつまらない、みじかいくせに、そこら中、みちの上まではみ出して、力いっぱいりきんでも、とても抜けない、つよい草。げんげは紅い花がさく、すみれは葉までやさしいよ。かんざし草はかん
三月 うすければ青くぎんいろに さくらも紅く咲くなみに 三月こな雪ふりしきる 雪かきよせて手にとれば 手にとるひまに消えにけり なにを哀しと言ひうるものぞ 君が朱なるてぶくろに 雪もうすらにとけゆけり ふるさと .
高村光太郎 「あどけない話」(詩集『智恵子抄』より)あどけない話 智恵子は東京に空が無いといふ、 ほんとの空が見たいといふ。 私は驚いて空を見る。 桜若葉の間に在るのは、 切つても切れない むかしなじみのきれいな空だ。 どんよりけむる地平のぼかしは うすもも色の朝のしめり.
山村暮鳥 「風景 純銀もざいく」(詩集『聖三稜玻璃』より)風景 純銀もざいく いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな かすかなるむぎぶえ いちめんのなのはな いちめんのなのは.
萩原朔太郎 「旅上」「五月の貴公子」(詩集『純情小曲集』『月に吠える』より)旅上 ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し せめては新しき背廣をきて きままなる旅にいでてみん。 汽車が山道をゆくとき みづいろの窓によりかかりて われひとりうれしきことをおもはむ 五月の朝のしののめ うら.