中原中也 「蜻蛉に寄す」(詩集『在りし日の歌』より)
蜻蛉に寄すあんまり晴れてる 秋の空赤い蜻蛉(とんぼ)が 飛んでゐる淡(あは)い夕陽を 浴びながら僕は野原に 立つてゐる遠くに工場の 煙突が夕陽にかすんで みえてゐる大きな溜息 一つついて僕は蹲(しやが)んで 石を拾ふその石くれの 冷たさが漸
どんぐり どんぐり山で どんぐりひろて、 お帽子にいれて、 前かけにいれて、 お山を降りりゃ、 お帽子が邪魔よ、 辷すべればこわい、 どんぐり捨てて お帽子をかぶる。 お山を出たら 野は花ざかり、 お花を摘つめば、 .
萩原朔太郎 「蝶を夢む」(詩集『蝶を夢む』より)蝶を夢む 座敷のなかで 大きなあつぼつたい翼はねをひろげる 蝶のちひさな 醜い顏とその長い觸手と 紙のやうにひろがる あつぼつたいつばさの重みと。 わたしは白い寢床のなかで眼をさましてゐる。 しづかにわたしは夢の記憶をたどらうとす.
北原白秋 「曼珠沙華」(詩集『思ひ出』より)曼珠沙華 GONSHAN. GONSHAN. 何處(どこ)へゆく、 赤い、御墓(おはか)の曼珠沙華(ひがんばな)、 曼珠沙華(ひがんばな)、 けふも手折りに來たわいな。 GONSHAN. GONSHAN. 何本(なんぼん)か、.
立原道造 「やがて秋……」(詩集『暁と夕の詩』より)やがて秋…… やがて 秋が 来るだらう 夕ぐれが親しげに僕らにはなしかけ 樹木が老いた人たちの身ぶりのやうに あらはなかげをくらく夜の方に投げ すべてが不確かにゆらいでゐる かへつてしづかなあさい吐息にやうに…… (昨日で.