誠実でありたい…吉野弘の詩「雪の日に」
吉野弘さんの「雪の日に」という詩を紹介いたします。この詩は合唱曲用に書き改められた歌詞も存在しますが、ここで取り上げるのは元詩の方です。雪の日に――誠実でありたい。そんなねがいをどこから手にいれた。それは すでに欺くことでしかないのに。それ...
雪の日に
――誠実でありたい。 そんなねがいを どこから手にいれた。
それは すでに 欺くことでしかないのに。
それが突然わかってしまった雪の かなしみの上に 新しい雪が ひたひたと かさなっている。
雪は 一度 世界を包んでしまうと そのあと 限りなく降りつづけねばならない。 純白をあとからあとからかさねてゆかないと 雪のよごれをかくすことが出来ないのだ。
誠実が 誠実を どうしたら欺かないでいることが出来るか それが もはや 誠実の手には負えなくなってしまったかのように 雪は今日も降っている。
雪の上に雪が その上から雪が たとえようのない重さで ひたひたと かさねられてゆく。 かさなってゆく。
吉野弘「雪の日に」
矛盾ゆえの辻褄合わせ吉野弘さんは、人の心にあるジレンマを、詩に託すのが巧みですね。はっきりと文字に現すのではなく、ひっそりと行間に潜ませているのですが、読む人にはそれが盲点を突かれたように感じられます。
「雪の日に」と「夕焼け」に共通するジレンマ代表作の「夕焼け」にも、ジレンマが描かれていますね。
吉野弘の代表作「夕焼け」の解説…やさしさとは何か mahoblog.com 誠実だから書ける詩ところで、こういう詩を書いているからこそ、吉野弘さんは誠実な詩人と思えるのは、私だけしょうか。
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