モアの絶滅と共にほろんだ史上最大のワシ、ニュージーランドの「ハーストイーグル」
ライオンやオオカミはもちろんヘビすら生息していなかったニュージーランド南島で、かつて捕食頂点に立っていたのは巨大なワシだった。「ハーストイーグル」は…
ライオンやオオカミはもちろんヘビすら生息していなかったニュージーランド南島で、かつて捕食頂点に立っていたのは巨大なワシだった。「ハーストイーグル」は、鳥とは思えぬ巨大な体と強靭な爪を持ち、食物連鎖の頂点に立っていた。 彼らの捕食対象は、自分の数倍はある飛べない巨鳥「ジャイアントモア」だ。だが人類の上陸によりモアが姿を消すと、ハーストイーグルも歴史の表舞台から姿を消すことになる。 ここでは、その強大さから「空飛ぶトラ」とも呼ばれていた、ハーストイーグルの生態に迫ってみよう。
記事をシェア みんなのポスト コピー コメント コメントを書く コメントを見る孤立していたニュージーランドの生態系の頂点捕食者
ニュージーランドの生態系は長く孤立して進化してきた。人間が到来する前、この島々には哺乳類の捕食者が存在せず、クマもキツネもネコ科動物もいなかった。 その代わり、鳥たちが生態系のあらゆる隙間を埋め、捕食者から草食動物まで多様な役割を担っていた。 約750年前、最初のポリネシア人入植者がニュージーランドの海岸に足を踏み入れた時、ハーストイーグルは(Hieraaetus moorei)、このような鳥主導の生態系で数少ない頂点捕食者として君臨していた。 ハーストイーグルは、これまでに知られている中で史上最大のワシだ。体重は最大で18kg、翼を広げると3m近くにも達した。 現存するイヌワシやハクトウワシの翼開長はおおよそ2.0〜2.3 mなので、長さはやや大きい程度だが、骨格の太さや脚力では明らかに上回っていた。 その骨は、1860年代に農場労働者が湿地を排水している際に初めて発見された。19世紀の探検家ユリウス・ハーストにちなみ命名されたこのワシは、当初から人々の想像力をかき立てた。 この画像を大きなサイズで見る ハーストイーグル(左上)がモアを襲う姿を予測した模型 User DO’Neil on en.wikipedia
ハーネストワシは確かに空を飛ぶことができた
しかし、研究者たちは長年その特異な姿に頭を悩ませてきた。 脚はトラのように太く力強く、一方で頭部はハゲワシのような形状をしていたため、「本当に飛べたのか?」という疑問さえあった。 近年の研究により、この鳥は実際に飛行可能であり、明確な目的をもって飛んでいたことがわかってきた。 科学者たちは現在、ハーストイーグルはワシのような殺傷能力と、ハゲワシのような食性を兼ね備えていたと考えている。 ロンドン自然史博物館の上級学芸員であるジョアンヌ・クーパー博士は次のように述べている。
主食はジャイアントモア
ハーストイーグルが主に捕食していたのはジャイアントモアと呼ばれる飛べない巨大な鳥だった。モアは複数の種が存在し、最大種では体高2 m以上、体重は約200 kgにも達した。 体格差は歴然だったが、ハーストイーグルはこの巨鳥を奇襲で倒した。 およそ8cmの鉤爪で後ろから獲物の脚を突き刺し、フック状のクチバシでとどめを刺す。研究によれば、その後は開いた死体に頭を突っ込み、まず内臓を食べていたとされる。 捕食方法はワシだが、食べ方はハゲワシのようだったとも言われる。 この画像を大きなサイズで見る モアの一種、アップランドモア public domain/wikimedia
驚くべき進化速度で巨大化
ハーストイーグルは大きさも驚異的だが、さらに注目すべきはその進化速度の速さである。 2005年に『PLOS Biology』誌に掲載された遺伝子研究によれば、ハーストイーグルはオーストラリアに生息する小型の猛禽類、アカヒメクマタカ(Hieraaetus morphnoides)やヒメクマタカ (Hieraaetus pennatus)と非常に近縁であることが判明した。 これらの現生種とハーストイーグルは、約220万年前に共通の祖先から分岐したと考えられており、わずか数百万年の間に体重1 kgほどから18 kgまで巨大化したことになる。これは進化生物学的にも非常に珍しい例である。 このような現象は「島嶼巨大化(アイランド・ギガンティズム)」と呼ばれ、天敵のいない島で空いた生態的ニッチを埋めるため、動物が急速に大型化することがある。 ハーストイーグルの場合、巨大で捕食者のいないモアという獲物の存在が、その進化を後押ししたとされる。 この画像を大きなサイズで見る
次の研究対象は「巨大化の遺伝子」
このような急激な進化がどのようにして起きたのか?その仕組みを解明するため、オタゴ大学のマイケル・ナップ博士らは、ハーストイーグルと他のワシ類のDNAを比較し、関与する遺伝子を探している。 「この進化が分子レベルでどう起きたのかを解き明かすことが、次のステップです」とナップ博士は語る。 かつて、ニュージーランドの鳥類は古代ゴンドワナ大陸の直系と信じられていた。そのため、同国は「モアの箱舟(Moa’s Ark)」と呼ばれ、太古の生態系がそのまま残ると考えられていた。 しかし地質学の研究により、約2500万年前のオリゴセーン期にはニュージーランドの大半が水没していた可能性が高いと判明。現在ニュージーランドに生息する動物の多くは、後から飛来・定着した可能性がある。 ハーストイーグルもおそらく、オーストラリアから飛来した小型のワシが、環境の変化に適応して巨大化したものと考えられている。 この画像を大きなサイズで見る ニュージーランドには、これまでに2度、鳥類の「侵入」が起きたと考えられている。その多くは、タスマン海を越えてオーストラリアからやって来たと見られる。最初の波(赤いバー)は約100万年以上にわたり続いたもので、気候変動によってニュージーランドに開けた草地(地図上の黄色)が広がったことが要因となった。2回目の波(青いバー)は数百年前に始まり、今度は人間が島にやって来て森林(地図上の緑)を伐採したことが引き金となった。 image credit:Frontiers in Ecology and Evolution
絶滅の引き金は人間が関与したモアの絶滅
ハーストイーグルは数十万年にわたり南島に生息していたが、その終焉はモアの絶滅によって急激に訪れた。 人類が1250年ごろに到達して以降、モアは狩猟や焼畑によって急激に数を減らし、その後200年足らずで絶滅した。主食を失ったハーストイーグルも、1400年ごろまでに絶滅したとされる。 直接的な衝突の証拠は少ないが、マオリの伝承「ポウアカイ(Pouākai)」には空から子供をさらう大鳥の話が残っている。 また、洞窟壁画に描かれた羽毛のない大きな鳥が、ハーストイーグルであった可能性もある。 この画像を大きなサイズで見る ニュージーランドの洞窟壁画には、頭部が無色の、暗色の大型ワシが描かれている。この絵は、ハーストイーグルが頭部の羽毛を欠いていた可能性を示唆している。これは腐肉食性の鳥類によく見られる適応である。 Credit: Alan Cressler ハーストイーグルは、モアの絶滅の際に道連れとなった。 この事例は、たった一つの種が消えただけで、生態系の頂点にいた存在さえも生きていけなくなるという、自然界の連鎖の脆さを物語っている。 現代に生きる私たちにとって、これはただの昔話ではない。自然との関係を築く上で、非常に重要な教訓を残している。 References: Journals.plos.org / Knowablemagazine / Frontiersin / Annualreviews / Zmescience
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この記事への コメント 10件
あの怪鳥オウギワシよりさらに一回り以上大きい! 2羽もいれば成人でも飛べそうだ モアも大きい 背はダチョウくらいなのに体重が1.5〜2倍くらいじゃないか 近代のジュラシックバードパーク見てみたかった このハーストイーグルは なにも残ってないんですかねぇ… 骨格とか、剥製とか…モアは残ってるのに😢 > その骨は、1860年代に農場労働者が湿地を排水している際に初めて発見された。ジャイアントモアを狩っていたから持ち帰れない→その場で頭を突っ込んで食べる(ハゲワシと同じ方法)→頭はハゲワシと同じように収斂進化するみたいな流れなのかなと想像しました。 3m 超というと見たことないんですがワタリアホウドリとかハゲワシと同じくらいのハイイロペリカンを思い出しますね。 軽自動車の規格が最大 3.4m を考えると大きいなと。 あるいは時々電車で見かける和弓が 220cm くらいらしいのでアレよりも 1m くらい長いことでも想像するとすごいですね
まず、モアの大腿骨の辺りを(文字通り)ワシ掴みもしくは傷を与えて逃げられないようにして、そのあと首か頭を蹴飛ばしてトドメ、と。 もしくは先に頭を死角から滑空攻撃かな。 なんにせよ怖い。 割と原生のワシと同じで、暴れてもいいから首根っこ体力消耗させた後は、獲物が生きたまま首の肉あたりから啄んだんじゃない? ニュージーランドは世界的に見ても自然破壊が進んでる国 コメントを書く世界の不思議が、あなたの受信箱に。
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